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就活塾は「危なすぎ」ない!

「近づくな、入るな!”就活塾”の危なすぎる実態」は間違っている

 東洋経済オンラインが10月20日に掲載した記事「近づくな、入るな!”就活塾”の危なすぎる実態」を読んで不安に感じている就活生も多いでしょう。本稿では上記記事(以下、「本件記事」という。)の問題点を指摘したいと思います。

だからどうした?「就活塾は誰でも設立できる」

 確かに、就活塾は誰でも設立できます。しかし、誰でも設立できることは「就活塾が危なすぎる」ことの論拠にはなりません。

 例えば、補習塾だって大学受験予備校だって誰でも設立できます。しかし、誰でも設立できるんだから補習塾や大学受験予備校が「危なすぎる」とは誰も思いません。

 学校法人以外の教育機関は基本的に誰でも設立できるものです。ましてや、純粋な教育機関ではない「就活塾」はだれでも設立できて当然です。営業の自由は憲法上認められた権利です。これを制限する趣旨の記事は理解に苦しみます。

こんなとは何だ?何様だ?「こんな教員たち」

 本件記事は、「新卒採用のコンサル経験がまったくない」ような教員の指導を受けても「あまり効果はない」と言い切っています。しかし、新卒採用のコンサル経験があれば就活指導能力が備わっているという論旨は論理の飛躍があります。

 就活指導の内容は、エントリシートの書き方や自己表現の仕方など小学校でも教えるような基礎的なものから、業界研究などビジネスの視点が必要なものまで多岐にわたります。むしろ、「新卒採用コンサル」プロパーの知識が必要なものの方が少ないでしょう。

 これらの内容は、それぞれ新卒採用とは直接関係ないバックグラウンドを持った教員から指導を受けるほうが適切です(文章の書き方は文章指導の講師、話し方は話し方の講師、SPIは算数指導の経験者、業界研究は当該業界出身者など)。

 したがって、新卒採用のコンサル経験がないから就活塾の教員不適格だというのは全く的はずれな批判です。

消費者契約法の問題!「不安をあおる発言に圧倒された学生は、抵抗できなくなってしまいます」

 本件記事では、一部の就活塾が「1対1で、または複数のスタッフが学生を囲んで、長時間にわたり勧誘」したり、「学生が『入会したくない』と言うと態度を一変させて『ここで入塾を決めなければ絶対に就職できない』などと怒鳴りつけ、不安をあおるような発言を」するから就活塾は危険だと論じています。

 しかし、上記のような営業方法は消費者契約法の「退去妨害」にあたり、契約を取り消すことができます。これは就活塾に限ったことではなく、様々な業態でこのような営業が行われることがあるため、消費者を保護するために消費者契約法が定められているのです。

 したがって、退去妨害をして営業をすることは就活塾固有の問題ではなく、全ての業態に共通するものです。就活塾が危険である論拠には成り得ません。

 このような事例を取り上げて就活塾の危険性を論じるところに、本件記事の非論理性が示されているうえ、筆者の悪意を感じます。

支離滅裂で論理破綻した記事「就活の相談は大学のキャリアセンター」

 上記で指摘したように、本件記事では「新卒採用のコンサル経験がまったくない(中略)教員たちに指導を受けてもあまり効果はないでしょう。」と論じている。その一方で、記事の末尾では「就職に関する相談は大学のキャリアセンターへ行くのが基本中の基本です。」「就活塾に行くのではなくて、大学のキャリアセンターのセミナーへ出席しましょう。」と、大学のキャリアセンターを手放しで絶賛しています。

 しかしながら、大学のキャリアセンターに「新卒採用のコンサル経験」が豊富な職員が指導してくれるケースはほぼ無いと言っていいでしょう。一般の大学職員と同様に採用されたキャリアセンター担当者が、相談に乗ったり情報提供したりするだけです。なかにはキャリアカウンセラーが担当制で相談に乗ることもありますが、「新卒採用のコンサル経験」が豊富だとは限りません。

 このように、本件記事は論旨が論理破綻しているだけでなく、就活生の不安を意味もなく煽っている。非常に悪質な記事である。東洋経済ともあろう一流の出版社がこのような悪質な記事を掲載するとは驚愕するばかりです。

 

文責:行政書士 戸川大冊

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