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こんな就活塾はヤバイ【詐欺就活塾に注意】

詐欺的な就活塾は存在する

 一部の就活塾は無料セミナーなどで強引な営業活動を行なっているようです。セミナー終了後に個別に説明を聞かされ,「今契約しないとダメだよ」等と言って契約を迫ることもあります。

 東京都の発表によると、「一生懸命塾」と名乗る就活塾が大学や就職活動合同セミナー会場近くで「就職活動生の意識調査」等と声をかけて連絡先を聞き出し、無料の説明会や就活セミナーに参加するように誘って事務所に来訪させた学生に対して、「あんたは一生成功しない」などと不安をあおり、
就職活動支援や人材育成をかかげる有料講座の受講契約について、執拗な勧誘を行なっていたとして処分されています。

 筆者は大学で講義を担当したり、同窓会の役員として大学に出向いたりしていますが、実際に下記のような勧誘の場面を多数目撃しています。東京都から処分されたにも関わらず依然として同様の勧誘が行われているので注意が必要です。

 東京都の発表内容は以下の通りです。

1 事業者の概要
事業者名: 株式会社もとい
屋 号: 一生懸命塾
代表者名: 代表取締役 米盛みゆき
本 店: 東京都千代田区飯田橋四丁目5番11号(パール飯田橋ビル4階及び8階)
設 立: 平成22年2月10日
資 本 金: 888万円
従業員数: 29名
業務内容: 『就活対策講座』『人財育成講座』等と称する講座の運営
売 上 高: 約9千6百万円(平成23年2月~平成24年1月)

2 勧誘行為等の特徴
(1) 大学や就職合同セミナーの会場付近で、学生に対して、就職活動や学生生活に関するアンケートを実施して連絡先を聞き出し、「明日、就活セミナーがあるので来ませんか」、「絶対にためになる説明会だから聞きに来てください」などと、有料の『就活対策講座』等の受講契約を勧誘する目的以外のことが主要な目的であるかのように告げて、事務所(一生懸命塾)への来訪を要請する。
(2) 来訪した学生に対し、教室があるフロアーの見学や、1時間程度の社会情勢等の講義を行い、個別ブースに案内する。ブース内では、厳しい就職活動や雇用状況などについて不安をあおるような説明を行った後、有料の『就活対策講座』等に関する勧誘を、引き続き又は複数回にわたり行う。
(3) 勧誘時に、学生が「一度帰って考えさせてください」などと告げて契約しない意思を示すと、営業員は態度を豹変させ、「今ここで決められないようなら、今後差し迫った状況になっても決断なんてできない」「あんたは一生成功しない」と強い口調で決めつけるなど威迫して困惑させたり、経済的に厳しいと断っている学生に対し、「日雇いのアルバイトをすればいい」などと告げて契約を迫るなど、執拗な勧誘を行っている。
3 勧告の内容
(1) サービスの販売の意図を明らかにせず、若しくはサービスの販売以外のことを主要な目的であるかのように告げて、又はそのような広告等で消費者を誘引することにより、契約の締結を勧誘しないこと、又は契約を締結させないこと。
(2) 消費者を威迫して困惑させ、又は消費者に迷惑を覚えさせるような方法で、契約の締結を勧誘しないこと、又は契約を締結させないこと。
(3) 法律及び条例の遵守について、内部教育等により従業員に徹底すること。

詐欺的な勧誘は東京都条例違反

 東京都が発表した「一生懸命塾」の勧誘内容は、「東京都消費生活条例」に違反しています。上で示した詐欺的な勧誘がどのような点で条例に違反しているか検討してみましょう。

販売目的不明示の禁止

 東京都の認定した事実によると、一生懸命塾は大学や就職セミナーの会場周辺で、学生に声をかけて、連絡先を聞き出しています。その際には「就活生の意識調査」「学生生活のアンケート」などを口実にアプローチしています。しかし、「一生懸命塾」の実際の目的は「就活対策講座」の受講契約の締結勧誘です。つまり、真実の目的を隠して他の目的を告げて消費者を事務所に来訪させ、契約について勧誘しています。

 このような勧誘は東京都消費生活条例第25条1項3号に規定される「不適切な取引行為」のうち「販売目的不明示の禁止」に該当します。販売目的不明示とは、取引に関する重要な情報を消費者に十分知らせず、又は誤信を招く情報や不確実な事項について断定的判断を提供して、勧誘し、又は契約させることです。

東京都消費生活条例第二十五条(不適正な取引行為の禁止)
知事は、事業者が消費者との間で行う取引(商品の購入、交換等を業として営む事業者が、消費者を相手方として商品の購入、交換等をする取引を含む。以下同じ。)に関して、次のいずれかに該当する行為を、不適正な取引行為として規則で定めることができる。

三 消費者に対し、取引の意図を隠し、商品若しくはサービスの品質、安全性、内容、取引条件、取引の仕組み等に関する重要な情報であって、事業者が保有し、若しくは保有し得るものを提供せず、若しくは誤信を招く情報を提供し、又は将来における不確実な事項について断定的判断を提供して、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

威迫困惑・迷惑勧誘の禁止

 上記のような詐欺的な手法による勧誘を受けて来訪した就活生に対して、一生懸命塾は威迫困惑・迷惑勧誘も行っています。東京都の認定した事実によると、「契約を締結しない」という意思を示した就活生に対し、「今ここで決められないようなら、今後差し迫った状況になっても決断なんてできない」「あんたは一生成功しない」と怒った強い口調で告げています。これは、消費者である就活生をを威迫して困惑するような言動で契約の締結を勧誘するものです。

 さらに、「金額が高いし、入るかどうかは考えたい」「4万円のお金は今ちょっと払えない」などと、就活生が経済的な理由で断りの意思を示しているにもかかわらず、さらに勧誘を継続したことも認定されています。このように迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘することも条例違反です。

 威迫困惑・迷惑勧誘とは、消費者を執ように説得したり、迷惑メール等により一方的に広告宣伝等を送り、又、判断力不足に乗じたり、心理的に不安な状態に陥らせる等して勧誘又は契約させることをいいます。

東京都消費生活条例第二十五条(不適正な取引行為の禁止)
知事は、事業者が消費者との間で行う取引(商品の購入、交換等を業として営む事業者が、消費者を相手方として商品の購入、交換等をする取引を含む。以下同じ。)に関して、次のいずれかに該当する行為を、不適正な取引行為として規則で定めることができる。

四 消費者を威迫して困惑させ、又は迷惑を覚えさせるような方法で、若しくは消費者を心理的に不安な状態若しくは正常な判断ができない状態に陥らせ、契約の締結を勧誘し、又は契約を締結させること。

不適正な取引行為は禁止されている

 東京都消費生活条例では、上記のような不適正な取引行為は禁止されています。このような勧誘に遭遇したら、「条例違反です」と告げて断固とした態度を取ってください。勧誘場面をスマホアプリで録音するといいでしょう。

 最近では、録音専用のアプリだけでなく、Evernoteなどのメモアプリでも手軽に録音ができます。このようなアプリを活用してやり取りを録音してください。

東京都消費生活条例第二十五条(不適正な取引行為の禁止)
第2項 事業者は、消費者と取引を行うに当たり、前項の規定により定められた不適正な取引行為を行ってはならない。

2020年3月31日にも業務停止命令

 「一生懸命塾」は2020年3月31日にも東京都から業務停止命令を受けました。「無料セミナーに興味ありませんか。」などと電話をかけて消費者(就活生)を呼び出し、無料セミナー後、さらに後日の再訪を求めて、来訪した消費者(就活生)に、就活塾への入塾の勧誘を行っていました。

 東京都はこのような営業について、特定商取引に関する法律に基づき、3か月の業務の一部停止を命じ、違反行為を是正するための措置を指示しました。また、事業者の代表取締役である「米盛みゆき」氏に対し、当該停止を命じた範囲の業務を新たに開始することの禁止を命じました。

一生懸命塾の違法勧誘とは?

一生懸命塾の勧誘行為は以下の特徴があるので注意してください。

1.企業の合同説明会場付近や大学付近で、消費者(主に大学生)に対して、チラシ配布やアンケートを行い、アンケート用紙に氏名、連絡先等の記入を求める。

2.入手した連絡先に電話をかけ、「就活生を応援するための無料セミナーに興味ありませんか。」などと告げて、消費者を事業者の事務所へ呼び出す。

3.無料セミナーに参加した消費者へ、無料セミナー後にアンケートを行い、一生懸命塾に興味があると答えると「説明会」などと告げ、再度、別の日に事務所へ呼び出す。
再訪した消費者を一対一で話をする席に案内して、一生懸命塾の説明と入塾の勧誘を行う。その際、消費者が金銭的な理由などで入塾を断ったり、「帰って考えたい。」などと、その場での決断を保留したいことを言っても執拗に勧誘を行う。

詐欺的な就活塾の見分け方

 無料セミナーなどにおけるスタッフの対応から,詐欺的な勧誘を繰り返す「ブラック就活塾」を見分ける方法を考えてみたいと思います。以下のような不当な勧誘を受けた場合には契約を後から取り消すことが出来ます。

監禁による勧誘

 消費者契約法4条3項2号では,勧誘をしている場所から消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から消費者を退去させないことにより困惑させられて消費者が契約を結んだ場合には取り消しができると定めています。帰りたがる学生を無理やり引き止めて契約をさせるような就活塾は,この法律に反する「ブラック就活塾」といえるでしょう。東京都から処分を受けた一生懸命塾の事例では、就活生は帰りたいと思ったがここまで説明されたら逃げられないと心理的に追い込まれ了承したという例があります。また、就活生が帰ろうとすると、スタッフはすごい形相になり「そうやって生きていけばいいじゃない。」「あんたは一生成功しない。」と、かなり厳しい口調で決めつけ、個別のブースの中で拘束される例もありました。

不実告知による勧誘

 また,無理やり契約を結ばせない場合でも,学生に不利益な情報を隠したり,誤認させたりして契約を結ばせる場合もあります。この場合も消費者契約法4条1項1号の規定により,消費者は取り消すことができます。不確実な事項につき断定的判断を提供することも取消事由に当たりますので,「絶対に〇〇の内定が取れる」などと断定して勧誘するのも「ブラック就活塾」です。

口約束でも契約成立

 契約書にサインをしたら,その契約書の控えを必ずもらうようにしましょう。契約自体は口約束でも成立します。しかし,消費者契約法3条によれば,事業者は消費者へ契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならないので,契約書を交付すべきです。契約書の控えを渡さない業者は「ブラック就活塾」といえるでしょう。

 契約書の写しを交付しようとしない場合には、繰り返し交付を求め、そのやりとりを録音しておきましょう。消費生活センター等へ相談する際に重要な証拠となります。

クーリングオフは適用されない

 なお,就活塾の受講契約については特定商取引法のクーリングオフは適用されません。ただし,就活塾が独自でクーリングオフ制度を設けている場合があります。そういった事業者は,良心的だといえるでしょう。入塾相談の際に、クーリングオフについて質問し説明を受けておくべきです。

親に相談しないよう口止め

 東京都から処分された一生懸命塾の例では、親などに相談しないよう口止めするケースが多く報告されています。就活生が就活塾の支払について親に相談しようとすると、詐欺的な就活塾スタッフは「みんなは、心配かけないために慣れてから親に話している。」「自立するためなのに、親に頼るのはおかしい。」「親に心配かけるのも良くないから、塾代のことは親に言わないで自分で払うように。」「親に迷惑をかけないように、自分のアルバイト代で払って欲しい。」「親には、後から話せばいい。」などと説明しています。

 これは、詐欺的な勧誘の被害者である就活生が親や消費生活センターに相談することにより、ブラック就活塾の不法な勧誘が明るみに出るのを遅らせる意図があります。支払い済みの受講費用を返金するのは極めて困難です。受講費用を支払う前に周囲の人へ相談しましょう。

東京都に寄せられた相談事例

【事例1】
平成24年4月、大学生甲は、企業主催の就活セミナー付近の路上で、「就活生の意識調査をしています。」と当該事業者の従業員Aから声をかけられ、名前、連絡先を記入して返すと、一生懸命塾のチラシを渡された。その日の夜、Aから電話があり、「明日、就活セミナーがあるので来ませんか。」と
誘われ、甲は予定も空いていたし、とてもためになるセミナーと強調されたので、行く約束をした。

翌日午前10時に、一生懸命塾を訪問し、厳しい就活状況などの話を数名の学生と共に聞いた後、当該事業者の従業員Bに個別に仕切られたブースに案内された。Bは「ミスマッチのない就職をするためにどうしたらよいか。」「有能な人間を会社も求めている。そういうのを身に付けないか。」と一方
的に話し始め、甲が塾の費用について尋ねても、「みんな自分で払えるくらいの金額」と言い、明示されなかった。Bから「今後も説明を聞きますか」とアンケートを渡され、甲はここで断るとBに悪いと思い、アンケートの「このまま説明を聞く」というところに丸印をつけた。Bは席を外してまた戻ると、午後のセミナーに空きが出来たので昼食をとって午後2時に来るように言った。

甲が午後2時に戻ると、再び8階の個別ブースに案内された。Bは「スキルアップ講座と人間力アップ講座の2つの講座がある。」などと説明し、まだ甲が入会すると言っていないのに、「頑張ろう」と握手を求めてきた。甲は断りたい気持ちがあり握手をためらっていると、Bの目の色が変わり理由を聞かれた。甲が「金銭的に厳しい。」と答えると、Bに、「悩みを解決するアドバイザーがいる。お金に関してアドバイスをすることができるが、聞きたいか。」と訊ねられ、甲は帰りたいと思ったが、ここまで説明されたら逃げられないと心理的に追い込まれ了承した。すると、当該事業者の従業員Cが来て、「入るの?」と聞いてきたので、甲が「金銭面で検討中。」と言うと、「なんで検討中なの。」「何が心配なの。」としつこく聞いてきた。甲が「収入もなく、地方から出て来ていてお金もないから。」と言うと、「日雇いのアルバイトをすればできる。」「アルバイト先も紹介する。」と言うので、甲は、ますます断れない状況に追い込まれた。甲は、Cにたたみかけるように説得され、もう逃げられないという気持ちになり、契約するまで帰れそうになかったので、仕方なく出された契約書に署名した。

Cから「入会金だけでも納めてもらえるか。」「近くにコンビニあるから下ろしに行こう。」と言われたが、甲は断った。甲が契約のことを親に話すと言うと、Cは「みんなは、心配かけないために慣れてから親に話している。」「自立するためなのに、親に頼るのはおかしい。」などと言った。一生懸命塾を出たのは、午後5時過ぎだった。

【事例2】
平成24年8月、大学生乙が大学の最寄駅近くを歩いていると、当該事業者の従業員Dが、「就活生のアンケートをとっています。」と声をかけた。Dは、簡単なアンケートをとると、一生懸命塾について、「人間として成長する。」「コミュニケーション能力がアップする。」などと説明を始め、「説明会がある。予約するから来ないか。」と乙を誘った。乙は、少し興味もあったし、見学に行くくらいのつもりで了承した。

数日後の午後2時に、乙が一生懸命塾を来訪すると、Dに8階の個別に仕切られた場所に案内された。しばらくすると、当該事業者の従業員Eが現れ、厳しい就職活動への不安をあおるような話をした後、一生懸命塾に入ると、人間力を高めることが出来て就職活動にも有利になると熱心に話してき
た。Eは、「一生懸命塾に入会したいか。」と聞いてきたが、乙は、料金の説明もなく、入会しようと決めたわけでもないので答えを濁した。するとEが、料金の説明をし始めた。乙は、金銭的に余裕がなく、入会金と1か月分の月謝合わせて4万円を初回に支払い、その後、毎月月謝を払い続けていくのは無理だと思ったので、Eに「4万円のお金は今ちょっと払えない。」と断ったが、Eが「日雇いのアルバイトをすればいい。」「アルバイトの紹介もする。」と説得してきたので、断りづらくなった。Eの勧誘は続き、乙が「この支払いは自分には難しい。今日は説明を聞きに来ただけなので、一度帰って考えさせてください。」と断ると、Eは、今までの親しげな様子が変わり、「じゃあ、帰っていいよ。契約しなくていいよ。」と、怒って突き放すような口調で言ったので、乙はとまどった。Eは「そんな優柔不断な態度で、今ここで決められないようなら、今後差し迫った状況になっても決断なんてできない。」とも言い、乙は自分が責められているように感じた。乙は判断が鈍ってしまい、Eが差し迫った様子で言うからには今決めなければいけないと思い、契約することにした。

Eは、「近くに銀行があるから入会金を今支払って欲しい。」と言ったので、乙は不安に思ったが、近くの銀行で入会金2万1千円を下ろした。Eからは「親に心配かけるのも良くないから、塾代のことは親に言わないで自分で払うように。」と言われたので、乙は親に相談できないと思った。時間はすでに午後6時近くになっていた。

【事例3】
平成24年7月、大学生丙は学校近くの路上で、当該事業者の従業員Fから「学生生活のアンケートに協力してください。」と声をかけられた。Fはアンケートの後、一生懸命塾のチラシを見せ「説明会は、予約制なので、よかったら来ないか。」と誘ってきたが、丙は、考えてみると言ってその場は終わった。

数日後に、Fから電話があり、「無料だから、説明会に来ないか。」と再度誘われ、丙は無料ならと思い、説明会に参加することにした。Fからの予約確認メールには、「かなりプラスになるガイダンスになっていますので、是非楽しみにして来てください。」などと書かれていた。

約束した当日の午前9時前に、丙が一生懸命塾を来訪すると、8階の個別に仕切られたブースの一つに案内された。当該事業者の従業員Gが現れ、厳しい就職活動の状況について話した後、一生懸命塾に入ると就職活動に有利なだけでなく、就職してからも役立つ能力が身に付くといった話をした。

説明が一通り終わったところで、契約や月謝の話になり、丙が「金額が高いし、入るかどうかは考えたい。」とその場で契約することを渋ると、それまでとてもにこやかに話をしていたGが雰囲気が変わって怒った表情になり、「やる気があるから来たんだよね。」と強い調子で言った。丙は、契約の話になるなら最初から参加しなかったと思ったが、Gの様子があまりにも豹変したことにとても驚いてしまい、言い返せずに黙った。Gは、「自己投資と思えばいい。」「バイト代で支払っている人も多い。」と勧誘を続けてきたが、丙は、奨学金とバイト代をやりくりして生活していて、月謝制だとしても金銭的に厳しい状態だった。しかし、Gの変化に戸惑ってしまい、また友人と会う約束の時間も迫っていたので、丙は、このまま話をしていても切りがないと思い始めた。また、周囲が見えない状況で判断が鈍ってしまい、入塾を承諾した。Gは、コンビニが近くにあるから、お金を下ろして入学金だけでも払うように言ってきた。丙は、当日中の支払いを不信に思ったが、コンビニでお金を下ろし、2万1千円を支払った。Gは、「親に迷惑をかけないように、自分のアルバイト代で払って欲しい。」「親には、後から話せばいい。」というようなことも言っていたので、丙は両親には相談できないと思った。

【事例4】
平成24年7月、大学生丁に電話がかかってきた。春頃に企業の合同説明会付近の路上で、「就職活動生のアンケート」と声をかけてきた当該事業者の従業員Hからだった。就職活動の状況を聞かれ、丁が、まだ内定が出ていないと伝えると、Hから「一度うちの説明会だけでも来てみませんか。一人
でやっていてはダメ。塾に入るか入らないかは来てから決めればいい。入る入らないにかかわらず、絶対にためになる説明会だから聞きに来てください。他の就職活動生の状況もわかる。」と誘われた。

数日後の午後1時に、丁は、一生懸命塾を来訪し、当該事業者の従業員Iと4階フロアーを30分位見学した後、8階の個別に仕切られたブースの一つに案内された。丁は、説明会と言われたので、複数の人を対象に教室形式で行なわれると思っていたが、個別のブースだったので少し戸惑った。

Iは、就職活動の状況は厳しいという話をした後に、「就職活動でも、社会で生きていくにも、必要なのはコミュニケーション力や人間力。それを鍛えるために、一生懸命塾では、班に分かれて自主的にプロジェクトをさせている。合宿もある。その合宿ですごく変わる。」と言った。丁はIの説明を聞きながら、大学で同じような活動ができるから入らなくていいと思ったので、「もっと詳しい説明に入っていいか」とIから訊ねられた時、「説明はいいです。」と断った。

すると、Iは急に態度が変わり、「あなたは、全然コミュニケーション力がない。」「あなたの将来は暗い。」と怒り出したので、丁は、その変わり様にとても驚いた。Iはまた、「あなたに何ができるの。実際にどこにも内定をもらってないじゃない。」「自分でやってたら結果は同じ。」と、強い口調でたたみかけるように言ってきた。丁は、今まで親しげに話していたJが、突然人が変わったように怒り出した姿にとても驚き困惑しながらも、「大学のキャリアセンターなどを使ってやるから大丈夫。」と、塾に入るつもりはないと話してみたが、「学校のキャリアセンターは意味がない。」「このままで(就職)出来るんですか。」などと、Iに切り返され、言い返すこともできず黙ってしまった。このまま話を続けても意味がないと思い、丁が帰ろうとすると、Iはすごい形相になり「そうやって生きていけばいいじゃない。」「あんたは一生成功しない。」と、かなり厳しい口調で決めつけてきた。塾に入ると言わない丁に対して、勧誘は長時間続けられた。丁は、個別のブースの中で拘束され、Iからたたみかけられ、強い口調で成功しないなどと決めつけられているうちに、Iの話は正しいのかもしれないと思い始め、また契約するまで帰れないと不安に思った。丁は、友人と約束をしていたが、友人に電話することもできず、契約すればこの状況から逃れられると思い、入会を承諾した。ビルを出ると、すでに午後6時を回っていた。

報道発表資料 [2013年3月掲載]より引用

Author Profile

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戸川 大冊
特定行政書士
早稲田大学政治経済学部卒。立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)。帝京大学や神田外語大学他首都圏の大学で企業研究・就職活動講義へ出講経験あり。就活塾の講師としても活躍。ブラック企業や就活塾に詳しい行政書士として朝日新聞・読売新聞の取材やNAC5「夕焼けシャトル」 出演などの実績もあり。

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