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入社するには身元保証が必要?


身元保証書を提出

入社時に「身元保証書」の提出を求める企業が大半です。

これは、企業が労働者を雇って使用する際に,使用者が損害を被る場合に備えて,親戚や知人などに,その損害を補填するように約束させておくものです。売上金の着服等、労働者の行為によって企業が受けた損害を、労働者が賠償できない場合のために、あらかじめ身元保証人を立てておくものです。このような契約を「身元保証契約」といいます。

身元保証法の規定

雇用契約に伴う身元保証については,保証人が不当に重い責任を負うことのないように,法律に規定が置かれています。具体的には、「身元保証ニ関スル法律」(略して「身元保証法」といいます。)によって、身元保証人の責任は限定的なものとされています。 この法律には、
① 一部例外を除き上限は 3 年
② 労働者の行為によって身元保証人の責任が発生しそうなときや、労働者の任務等の変更によって身元保証人の責任が重くなる場合には、企業から身元保証人に通知する必要がある。また、身元保証人はそれを理由に、以降の契約を解除することが出来る
③ 保証すべき金額は損害額そのものではなく、会社側の過失等一切の事情を考慮して、裁判所が決定する

等の規定があり、これに反する契約で身元保証人に不利益なものは無効となります。

ブラック企業の身元保証書に注意

身元保証契約は労働契約とは別個のものであって、労働契約にあたって必ず締結しなければならないものではありません。しかし、実際には入社時に提出を断るのは難しいでしょう。

ブラック企業などでは、法律に反した身元保証書を提出させようとするケースがあります。身元保証書を提出したとしても、法律に反する請求が無効となることは就活生も覚えておきましょう。

試用期間の過ごし方


試用期間とは何か

会社説明会などで、試用期間についてしっかり説明を受けておく必要があります。就活生は手取り額などの待遇面に関心が集中しがちなので、注意が必要です。

試用期間とは、被用者の勤務態度・能力・技能等を見て正式採用するかどうかを判断する期間です。試用期間中といっても、既に会社で働いている訳ですから、雇用契約は始まっています。したがって、本採用しないことは「不採用」ではなく「解雇」となるため、合理的な理由が必要となります。

この場合に要求される「合理的な理由」とは、試用期間中の勤務状態等により、採用前には知ることができなかった重大な事実が判明したような場合です。

試用期間の長さ

試用期間が長すぎたり、短い試用期間を何度も延長したりすると、労働者に対して重大な不利益を及ぼします。試用期間の長さについて、「◯年以上を禁止する」と定めた法律はありません。しかし、判例では、「労働者の能力や勤務態度等について判断するのに、通常必要な範囲を超えた試用期間については無効」としています(ブラザー工業事件 名古屋地裁判決昭 59.3.23)。

契約書によって定められた試用期間を、正当な理由なく延長することは認められません。

特殊な試用期間

契約社員など形態での契約を交わし、一定の「期間を定めた雇用」をすることで、正社員としての適性を見極めようとする企業もあります。この場合、「解雇」ではなく「契約満了」となるため、本採用しないことが簡単に可能になってしまいます。就活生にとって非常に大きな不利益になるケースなので、就活中には説明会なのでしっかりと説明を受けましょう。

なお、能力や適性について良く知っているはずのパート労働者を正社員に登用する際に試用期間を設けることはできません。

内定中の研修は出席が必要?


内定期間中も研修が行われる

就活が成功し内定を獲得しても、学業に専念できるとは限りません。内定期間中に企業が研修を行う場合が多いです。

内定期間に企業が行う「研修」については、就活生(内定者)はどのように考えるべきでしょうか。

法律上はどのように扱われるか?

任意参加の内定者研修だと伝えられていても、欠席することなどできないと考える内定者も少なくないでしょう。しかし、働き始めるのはまだ先なのに、なぜ研修に参加しなければならないかという問題があります。この点について法律上どう判断すべきでしょうか。

企業は内定者に業務を命令できない

研修日に臨時で雇用され、業務命令で参加している場合、研修であっても「賃金」は支払われますし、研修中にケガを負った場合等には労災保険が適用されます。

本来、学生は学業に専念すべき立場にあるため、新卒採用の場合には内定者はまだ在学中です。したがって、内定期間中において企業が内定者に業務命令をすることはできません。内定者が自身の自由な意志で同意した場合に限って、業務命令に応ずる義務が生じます。

また、いったん研修の参加に同意したとしても、学業と抵触する場合等やむを得ない理由がある時には研修参加を取りやめることができます。その場合企業は、内定者が約束した研修参加を取りやめたことを理由として、内定を取り消すことはできません(宣伝会議事件 東京地裁判決 平成 17 年 1 月 28 日)。

研修を強制された場合には相談

上記の通り、企業は内定者に対して自社の研修へ参加を強制することはできません。そのため、内定後に内定先企業から研修参加を矯正されたり、事実上強制と同視できるような状況に遭った場合には、就職課やキャリアセンターなどに相談してください。

そのような強制をしてくる企業は「ブラック企業」と言えますので、採用後にも違法な扱いを受ける可能性が高いです。場合によっては、内定を辞退して新たな就職先をさがすべきでしょう。

決して一人で悩まず、大学の就職関連部署や専門家に相談してください。

内定辞退をすると違法?注意点は?


意思表示から2週間で労働契約は終了

 内定者の方から入社を辞退する場合には、民法第627条により、労働契約解約の意思表示をした日から2週間経過することによって、契約は終了するとされています。労働者には憲法で認められた「職業選択の自由」があります。したがって、内定の辞退を企業が拒否することはできません。

民法第627条 (期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2.期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3.六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない。

 しかし、そうは言っても、一度約束したことを取り消すわけですから、なるべく早く、はっきりと意思表示し、出来る限り迷惑をかけないようにしましょう。複数の会社から内定をもらった場合、自分の適性、やりたいこと、会社の将来性などを十分に考慮して、早めに就職する会社を決め、実際に就職するつもりのない会社に対しては、内定辞退の申し入れをすべきです。本採用間近の内定辞退は会社にも他の就活生や後輩にも迷惑をかけます。

会社側が内定取り消しするには制約あり

 一方で、企業側からの内定取消しについては、法律的に多くの制約があります。前々回「内定=労働契約成立?」の記事で説明したとおり、内定によって労働契約が成立します。前回「内定取り消し=解雇」の記事で説明したとおり、内定取り消しは法律上は「解雇」と同じだからです。そのため、正当な理由がなければ内定取り消しは認められません。

悪質な企業は理由をデッチ上げて内定辞退を迫る

 しかし、急激な景気の変動などによって、就活期間途中で採用方針を変える企業もあります。実際に、リーマンショックや東日本大震災の時には、内定者に対して「内定辞退届」の提出を強要するなどのトラブルもありました。悪質なケースでは、内定者に対して能力的に過大な要求をしたうえに、「能力不足」・「業界に向いていない」・「不採用になるより辞退した方があなたのため」などの理由で、内定辞退を迫る企業もありました。

 厚生労働省は、「本人の意思に反して内定辞退を強要するなどの不適切な事例は、本来は採用内定取消しとして取り扱うべき事案である可能性がありますので、ハローワークが事実関係を確認し、内定取消通知書を提出するよう指導する場合があります」としています。(厚生労働省『事業主の皆様へ ~新規学校卒業者の採用内定取消し、入職時期繰下げ等の防止に向けて~』)

悪質な企業には泣き寝入りせず専門家に相談を

 もし、意に反して内定辞退を強要された場合には、すぐに応じず、専門家や学校のキャリアセンターなどに相談してください。もっとも、このような悪質な企業は「ブラック企業」である可能性が高いので、その企業には就職せずに他の就職先を探しましょう。

東京都「就活必携労働法」を参考に作成

内定取り消し=解雇


内定の法的性質

 前回の解説で述べたように、内定期間中は勤務は開始していないですが、労働契約そのものは成立しています。労働契約も「契約」である以上、内定者と企業の両方がこれを守らなければいけません。

 「内定」によって労働契約が成立している場合には、企業側の都合による「内定取消し」は「解雇」と同じ意味を持ちます。したがって、労働契約法や労働基準法などで決められた、「解雇」についてのルールを守る必要があります。具体的に法律の条文を見てみましょう。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働基準法第20条(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

労働基準法第22条(退職時等の証明)
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

内定取消には合理的な理由が必要

 これらの条文に書いてある条件に加えて、企業から内定を取り消す場合には、解雇と同様、合理的な理由が必要になります。すなわち、採用内定当時に既に知っていた事情を理由とした、内定取消しは認められていません。学校を卒業できない、健康状態が悪化して仕事が出来ない、履歴書の不実記載、犯罪行為、企業の経営状態の悪化など、内定時に予測できなかった「重大な理由」がなければ内定取り消しは出来ないのです。

 また、国は企業に対して、「採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること」を求めています(新規学校卒業者の採用に関する指針)。さらに、止むを得ずに新卒の採用内定取消しを行う場合には、事前にハローワークなどに通知する必要もあります(職業安定法施行規則第35条第2項)。

 内定が取り消された場合には、専門家に相談することをお勧めします。

東京都「就活必携労働法」を参考に作成

内定=労働契約成立?


「内定」って何?

 就活を進めていくと、一定の時期に企業から「採用内定通知」が送られてきます。また同時に、「承諾書」や「誓約書」などの書類提出を求められます。このような手続きが始まると、企業と就活生の間には「労働契約」が成立したと考えられるのでしょうか?不安になった就活生から、毎年多くの質問が寄せられています。
 裁判所の判決によると、少なくとも、内定通知と誓約書などの提出の両方が揃っていれば、「労働契約」が成立しているとされます。ただし、契約を締結したからといっても、すぐに働き始めるのではありません。通常の就活の場合、学校の卒業を条件に、4月1日から働きはじめる契約になっています。これを「始期付解約権留保付労働契約」といいます。

「内々定」とは?

 一方「採用内々定」は、「採用内定通知」以前の段階で行われるもので、まだ選考の途中に過ぎません。したがって、一般的にはまだ採用が正式決定していないと考えられています。しかし、名称が「内々定」であっても、その企業の毎年の採用方法や、応募者とのやり取りの経過によっては、「契約が締結されている」と解釈できる場合もあります。不安な場合には専門家にご相談下さい。

「内定」に関する最高裁判例

「採用内定の実態は多様であるため、・・・一義的に判断することは困難であるが、本件の事実関係のもとにおいて・・・企業者からの募集に対し求職者が応募したのは労働契約の申し込みであり、これに対する採用内定通知は、右申込みに対する承諾であって、求職者の誓約書の提出とあいまって、これにより、就労の時期を大学卒業直後とし、それまでの間、誓約書記載の内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのが相当である」

(大日本印刷事件 最高裁判決昭和 54.7.20)

東京都「就活必携労働法」を参考に作成

求人情報の記載内容は信じていいの?


「求人票」の見方

 インターネット上の求人情報、学校のキャリアセンターや就職課に掲示される求人票の情報を見て会社説明会に臨む就活生が多いでしょう。しかし、それらに記載されている情報は、企業が保証している「労働条件」そのものではありません。注意深く見てみると、賃金などについても「実績」・「見込み」と記載されているのが普通です。

 したがって、会社説明会や面接で担当者から受けた「説明内容」が、上記のような情報源に記載さていたものと異なっていた場合には、説明会などでの「説明内容」の方が優先します。求人票に賃金見込額として記載された初任給などは、入社時までに確定されることが予定された「目標」としての額とされており、実際の額と異なるからといって、就職後に請求することはできません。

インターネットの情報だけに頼るのは危険

 インターネット上の情報だけに頼って就活すると、大切な情報をキャッチできない危険性があります。会社説明会などに実際に参加し、担当者の話をしっかりと聞いて、HPなどに掲載された情報とズレはないか確認するようにしましょう。

 ただし、応募者は求人票の記載内容を期待して応募している訳ですから、実際の賃金が求人票の見込額を著しく下回ることは許されないとされています(八州測量事件 東京高裁判決昭和58.12.19)。求人票に掲載された条件を「著しく下回る」ようなブラック企業であることが入社後に発覚した場合には、毅然と対応することも必要です。

東京都「就活必携労働法」を参考に作成

 

就活の流れを法律的に考える


就職活動の流れを労働法の視点から見ると、どうなるのでしょうか。「内定を蹴ったら訴えられる?」「企業は内定を自由に取り消せるの?」などと、不安な気持ちで就活を始めている学生も多いと思います。

そこで今回から、就活の流れに沿って、就活生が知っておくべき労働法の知識を解説していきたいと思います。

新卒採用では、「企業の求人情報の公開」→「募集開始」→「応募」→「採用試験」→「面接」→「内定通知」および「承諾書などの提出」→「入社」という流れで就活が進んでいくのが一般的です。これを図にすると、下記のようになります。

就活の流れ

東京都「就活必携労働法」より引用


就職活動期間は、内定・採用などの出来事によって区切られており、法律的な関係も、それぞれの期間によって変わってきます。それぞれの期間ごとにポイントを見て行きましょう。

 

有給と取るとマイナス査定するブラック企業


前回は「年次有給休暇」について説明しました。就活生の皆さんも有給休暇について理解していただけたと思います。

大企業をはじめとして,労務管理がしっかりした企業では,従業員に有給休暇を取得するよう推奨しています。有給休暇消化率が悪い従業員には個別に指導が入るようなところもあります。

それに対して,中小企業では有給休暇についての認識が低い所が多いです。

さらに,いわゆるブラック企業では有給休暇を取得すると賞与の査定にあたってマイナスに評価されることが多いです。このような会社は,「有休を取得しなかっただけ多く働いたのだからプラス査定は当然」と言っていますが,これは法律上問題ないのでしょうか。

労働基準法に定められた年次有給休暇の取得に対する不利益取扱いの禁止について,労働基準法附則第136条は,使用者は年次有給休暇を取得した労働者に対して,賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないということを規定しています。年次有給休暇の取得を賞与査定のマイナス要素として扱うことはこの規定に抵触することになりますので許されません。

就活生の皆さんは,採用担当者に対して従業員の有給休暇消化率を質問してみましょう。

労働基準法 附則 第136条
使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

有給休暇は上司の許可がないと取れない?


一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇を「年次有給休暇」といいます。これは「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。有給休暇については、就活生もぜひ知っておきましょう。
年次有給休暇が付与される要件は次の2つです。

(1)雇い入れの日から6か月経過していること
(2)その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

この要件を満たした労働者は、10労働日の年次有給休暇が付与されます。また、最初に年次有給休暇が付与された日から1年を経過した日に、(2)と同様要件(最初の年次有給休暇が付与されてから1年間の全労働日の8割以上出したこと)を満たせば、11労働日の年次有給休暇が付与されます。その後も同様に要件を満たすことにより、付与される日数が増えていきます。

この年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないと労働基準法で定められています。使用者は、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与ることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、他の時季に年次有給休暇をえることができますが、年次有給休暇を付与しないとすることはできません。
いわゆるブラック企業企業では有給休暇を一切与えない場合が多くあります。注意が必要です。

パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない労働者についても年次有給暇は付与されます。ただし、正社員の場合よりも少なく、比例的に付与されます。

出典:厚生労働省HP

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