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内定取り消し=解雇

内定の法的性質

 前回の解説で述べたように、内定期間中は勤務は開始していないですが、労働契約そのものは成立しています。労働契約も「契約」である以上、内定者と企業の両方がこれを守らなければいけません。

 「内定」によって労働契約が成立している場合には、企業側の都合による「内定取消し」は「解雇」と同じ意味を持ちます。したがって、労働契約法や労働基準法などで決められた、「解雇」についてのルールを守る必要があります。具体的に法律の条文を見てみましょう。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働基準法第20条(解雇の予告)
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

労働基準法第22条(退職時等の証明)
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

内定取消には合理的な理由が必要

 これらの条文に書いてある条件に加えて、企業から内定を取り消す場合には、解雇と同様、合理的な理由が必要になります。すなわち、採用内定当時に既に知っていた事情を理由とした、内定取消しは認められていません。学校を卒業できない、健康状態が悪化して仕事が出来ない、履歴書の不実記載、犯罪行為、企業の経営状態の悪化など、内定時に予測できなかった「重大な理由」がなければ内定取り消しは出来ないのです。

 また、国は企業に対して、「採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること」を求めています(新規学校卒業者の採用に関する指針)。さらに、止むを得ずに新卒の採用内定取消しを行う場合には、事前にハローワークなどに通知する必要もあります(職業安定法施行規則第35条第2項)。

 内定が取り消された場合には、専門家に相談することをお勧めします。

東京都「就活必携労働法」を参考に作成

Author Profile

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戸川 大冊
特定行政書士
早稲田大学政治経済学部卒。立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)。帝京大学や神田外語大学他首都圏の大学で企業研究・就職活動講義へ出講経験あり。就活塾の講師としても活躍。ブラック企業や就活塾に詳しい行政書士として朝日新聞・読売新聞の取材やNAC5「夕焼けシャトル」 出演などの実績もあり。

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