企業は自由に内定取り消しできる?
採用内定までは,使用者には「採用の自由」が保障されています。しかし一般的には,採用内定以降は使用者が内定を取り消すと,解雇の場合と同様に扱われるとされています。
すなわち,内定取消は解雇権濫用の法理の適用を受けるのです。「客観的に合理性を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労契法 16 条)は,その内定取消は無効となります。この場合,使用者は労働者(学生)を従業員として扱わなければなりません。
もっとも,卒業を条件とした内定の場合に,学生が単位不足で卒業できなかったことを理由とする内定取消は,解雇権濫用に当たらず有効です。また,地震などの天災地変によって工場が崩壊したような場合など,内定当時に予測できなかったような,会社にとって重大な事態が発生したときにも,内定取消は有効とされます。
なお,内定者(学生)が内定を辞退することは,法的には「退職の自由」(民法627 条 1 項)の問題です。しがたって,道義的にはともかく,法的には特に制限はありません。
法律論をかざして内定辞退を思い留まらせようとする会社は「ブラック企業」です。関わらないほうが良いでしょう。
参考:「使用者のための労働法」東京都発行
Author Profile
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特定行政書士
早稲田大学政治経済学部卒。立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)。帝京大学や神田外語大学他首都圏の大学で企業研究・就職活動講義へ出講経験あり。就活塾の講師としても活躍。ブラック企業や就活塾に詳しい行政書士として朝日新聞・読売新聞の取材やNAC5「夕焼けシャトル」 出演などの実績もあり。
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